『贈与税の配偶者控除を検証する』 税務研究会 笹岡先生 その3

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(続き)

1筆の宅地上に贈与者夫婦の居住する家屋と、生計を一にする親族の居住する家屋とがある場合における、当該宅地の共有持分の贈与に対する取扱い

これは以前同様のご相談を受けたことがあります。ご当地東松山などの地方ではよくあるケース。

1筆の土地の地積が500㎡、夫妻の居住用家屋の敷地300㎡、長男の居住用家屋の敷地200㎡で、夫が土地を全部所有しているケースにおいて、妻が共有持分2/5(200㎡)の贈与を受けた場合。

これ、相基通21の6-3(店舗兼用住宅等の持分の贈与があった場合の居住用部分の判定)但し書きの適用なし。相基通21の6-3は1筆の宅地が1棟の店舗兼住宅等の敷地として利用されている場合に適用されるもの。土地の持分をある部分から優先的に贈与するという考えを民法は採用していない。司法書士や土地家屋調査士には常識の範囲。

では、どうすればいいか。2棟の建物の敷地の利用状況に応じて分筆してから贈与すれば適用あり。ただし、分筆時に境界を確定する必要がある。四方を。隣地とうまくいっていないと境界確定の押印をしてくれないかも。筆界特定制度も検討。

(店舗兼住宅等の持分の贈与があった場合の居住用部分の判定)
21の6-3 配偶者から店舗兼住宅等の持分の贈与を受けた場合には、21の6-2により求めた当該店舗兼住宅等の居住の用に供している部分の割合にその贈与を受けた持分の割合を乗じて計算した部分を居住用不動産に該当するものとする。
 ただし、その贈与を受けた持分の割合が21の6-2により求めた当該店舗兼住宅等の居住の用に供している部分(当該居住の用に供している部分に受贈配偶者とその配偶者との持分の割合を合わせた割合を乗じて計算した部分をいう。以下21の6-3において同じ。)の割合以下である場合において、その贈与を受けた持分の割合に対応する当該店舗兼住宅等の部分を居住用不動産に該当するものとして申告があったときは、法第21条の6第1項の規定の適用に当たってはこれを認めるものとする。また、贈与を受けた持分の割合が21の6-2により求めた当該店舗兼住宅等の居住の用に供している部分の割合を超える場合における居住の用に供している部分についても同様とする。(昭57直資2-177追加、平6課資2-114改正)
(注) 相続の開始の年に当該相続に係る被相続人から贈与により取得した居住用不動産で特定贈与財産に該当するものについて法第21条の6第1項の規定を適用する場合において、19-10により21の6-3のただし書に準じて当該居住用不動産に該当する部分の計算を行っているときは、同項の適用を受ける居住用不動産は21の6-3のただし書により計算するものとする。

専門学校の問題集では定番の通達。

実務で注意したいのはアンダーライン部分。

「申告があったときは」とあるので、更正の請求はダメです。更正の請求は申告じゃないですからね。

「法第21条の6第1項の規定の適用に当たっては」、つまり、小規模宅地等の特例には影響しない。店舗兼用住宅において贈与税の配偶者控除を居住用部分から優先的に適用させた後に、夫死亡、相続税の申告で小規模宅地等の特例を検討するときには、贈与時の申告状況は加味しない。

(続く)

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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