税制審議会が答申~資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について(日税連)

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4月22日、日税連の税制審議会が、令和3年度諮問事項「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について」に対する検討結果を取りまとめ、神津会長に答申をしております。

税制審議会が答申~資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について - 日本税理士会連合会
税制審議会(会長=金子宏東京大学名誉教授)は2月21日、令和3年度諮問事項「資産移転の時期の選択に中立的な相続
  • 若年世代への資産の早期移転を促進するための税制について
  • 資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税制について

大きな項目として上記2点。

若年世代への資産の早期移転を促進するための税制について

また、贈与税の課税は生前贈与に対して過重であり、少額な基礎控除のため、親族間で必要な贈与が行いにくいというのが一般的な国民の認識である。
このような経緯と納税者の認識を勘案すれば、基礎控除の額は、資産の移転に障害とならない水準に引き上げることを検討する必要がある。

本項の結論としてはここでしょうか。その前段として、若年世代に資産移転が進まないのは、税制だけの問題ではなく、公的年金制度、医療介護等の高齢者に対する社会保障制度の整備にもかかわってくる、と。個人的にもそう思います。社会保障費を高齢者からも徴収し、税制は若年世代の生活を阻害しないよう設計するべきでしょう。そうしないと社会がもたない。が、高齢者主体の選挙では早々変わらないでしょう。

資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税制について

もはや最近の税制改正の目玉商品となりつつある本項。個人的には2年間は据え置きと思っておりますが(住宅取得等資金の非課税制度が2年延長されているから)

「資産の移転の時期の選択に中立的な税制」については、新たな累積課税制度を措置する必要はなく、現行の相続時精算課税制度を基礎として贈与税制を検討することが適当である。同制度は、もともと高齢者から若年世代への資産の移転を促進させるとともに、資産の有効活用を図るというのが創設時の趣旨であった。しかしながら、その利用状況は低迷しており、制度の目的が達成されているとは言い難い。
同制度が広く利用されていないのは、制度上の問題点と納税者からみた課税上のリスクがあるためであると考えられる。したがって、同制度を活用して相続税と贈与税の一体化を図るのであれば、現行制度の問題点を検証し、適用上のリスクと納税者の不利益を排除する必要がある。

本項の結論はここでしょうか。相続時精算課税を基本に贈与税制を再構築しつつ、制度利用が低迷している理由である課税上のリスクと納税者のリスクを排除する必要がある、と。相続時精算課税の問題点として、相続税制の改正と税負担の変動の問題、贈与財産の価額の下落と相続税課税の問題、贈与財産に対する小規模宅地等の特例の不適用問題、少額贈与の記録管理問題、左記問題に対するマイナンバー制度、が列挙されているところです。これらを解消するのはなかなか頭を使った改正が必要ですね。財務省主税局の方々には知恵を絞っていただきたいですね。

で、答申では「おわりに」で、平成25年度税制改正時、相続税においては基礎控除圧縮、税率引上げがあったものの、贈与税では最高税率の引上げを行ったのみで、その仕組みについて、以上のような問題をはらんでいたにもかかわらず、何ら見直しが行わなかったと指摘。本来は、このときに資産の移転に関する税制として総合的に見直しを行うべきであったと考えられる、と。

つまり、相続税について大幅な見直しおこなったにもかかわらず、その補完税である贈与税については、何ら見直しを行わなかったことで、近時において「資産の世代間移転を促進する税制」が必要となり、「資産移転の時期の選択に中立な税制」の構築が課題として残されたとみることができる、と。

そして、基礎控除縮小と税率改正により、相続税の課税割合は改正前に比し2倍近くに増加しており、相続税の大衆課税化という結果になっている。国際的には相続税を廃止縮小する国が増加する中でわが国だけが課税強化を図った形になっている。相続税を回避するために人、物が国外流出し、国内が空洞化することが国民の福祉に資するかどうかを検証する必要がある、とし。

相続財産や贈与財産に対してどの程度の税負担を求めることが適当であるか、また、課税の範囲をさらに拡大することが適切かどうかは、国民の「相続」や「資産の承継」に対する認識を踏まえて引き続き検討する必要があるが、相続税の課税を強化する必要がないのであれば、それを補完するための贈与税の課税を強化する必要性も相対的に薄れ、結果として世代間の資産移転が容易になる税制が構築しやすくなると考えられる。そうした税制が経済の活性化に寄与するとともに、資産の移転に対する税負担について、国民が納得できる税制が構築されることを期待したい。

としめています。

特段、新しい考え方等は今回の答申において示されていませんが、現在の日税連の税制審議会の考えを拾っておくという意味では一読しておく必要はあろうかと思います。

で、生前贈与を利用した節税対策については、一切触れられていないですね。そこはあまり重要な論点ではないのでしょうか。

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関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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