税務弘報 2016年7月号
特集 相続税務最新事情・傾向の落とし穴
評価通達の落とし穴
公認会計士・税理士 金井義家先生
財産評価は基本的には通達行政による執行ですが(相当な理由がないと例えば鑑定評価ははねられる)
財産評価基本通達6項の発動には要注意と。最近では「タワーマンション節税」についてはこれを適用するなんて言われていますね。
有名どころで、非上場株式の評価の書籍では必ず登場する「平成23年9月28日付裁決」での財基通6項の適用を確認。
J社の株主構成(全て普通株式)
- 被相続人P2氏とその親族→14.91%
- J社の従業員10名→100%→K社→7.88%
- J社〇〇持株会→24.03%
- J社従業員持株会→25.16%
- H社→24.18%
- その他の少数株主→3.84%
被相続人の有する非上場株式が財基通188(3)の要件を満たすものとして配当還元で当初申告したが、当局に否認されて原則評価とされた事例。
K社は被相続人と血縁関係のないため「同族関係者の議決権の合計数」に含まれないように外見上は見えるが、税務調査の結果、K社には実態がなく議決権行使も被相続人の配偶者に委任していたこと等の事実認定により、K社は法人税法施行令4条6項の「同意している者」に該当するとして、K社の議決権も含めて188(3)の要件を判定すべしと判断されたもの。
クライアントの租税回避の意図を見抜く必要性がある。
事後的に集合研修で「もっともらしい税理士批判」をすることはいくらでもできるが、実務家であるわれわれは当初申告でどうするかという緊張感に満ちた判断を現場で常に要求されるのである。
これは肝に銘じたい。
クライアントのリスクは「本税+附帯税」。
税理士のリスクは附帯税の負担を要求されうることだが、それ以上に「説明義務違反による損害賠償請求権」が怖い。タワーマンション節税を積極的に勧めて失敗したときに、クライアントが結果として被った投資損失を負担しろ、ってパターンは絶対に避けたい。リスクが巨額すぎるので。
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi