実務家の疑問等に基づく「居住用賃貸建物」Q&A【前編】

週刊税務通信 令和7年8月18日 №3863より

令和2年度税制改正により、令和2年10月1日以後に行う居住用賃貸建物の取得については、仕入税額控除の適用が制限されているところですが。改正から数年がたち、実際に居住用賃貸建物を売却等する事例も出てきているため、2回に分けてQ&A形式で取り上げるとことで。

居住用賃貸建物の意義
消費税が非課税となる住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物‟以外”の建物で、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの。

高額特定資産
課税仕入れ等に係る支払対価の額が税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産

調整対象自己建設高額資産
他の者との契約に基づき又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、建設等に要した課税仕入れにかかる支払対価の額の100/110に相当する金額等の累計額が1,000万円以上のもの

例えば、建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など、状況から客観的にみて住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物は、住宅の貸付用に供しないことが明らかな建物として居住用賃貸建物に該当せず、仕入税額控除の対象となる。

判定時期
取得時の状況

「住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物」の判定要素
建物の構造、設備からみて、「住宅」(人の居住の用に供する家屋)と認められる建物であっても、建物取得時に契約書等から「住宅の貸付の用に供しないことが客観的に明らかなもの」と言えるケースもあり。例えば、事務所用として使用することが建物の取得時点で契約書等から客観的に明らかであれば居住用賃貸建物に該当しない。

社宅や従業員寮
従業員から使用料を徴収する社宅等の場合
居住用賃貸建物に該当して仕入税額控除の対象とならない。

従業員から使用料等を徴収しない社宅等の場合
無償で貸し付けることが取得時点で契約書等で明らかな社宅等の場合、対価を得て貸付けが行われるものではないことから、居住用賃貸建物に該当せず、仕入税額控除の対象となる。

旅館やホテル
仕入税額控除の対象となる。

販売目的で取得した居住用マンション
つまり棚卸資産として取得した建物で、所有期間中に住宅の貸付の用に供しないことが契約書等で客観的に明らかであれば、居住用賃貸建物に該当しない。一方、例えば、取得時にマンションを引き続き賃貸予定の入居者が存在しているなど、販売するまでの間に住宅の貸付用に供することが明らかな建物は、居住用賃貸建物に該当する。なお、居住用賃貸建物に該当したとしても、3年以内に実際に販売した場合には、制限を受けた仕入税額控除につき調整計算が必要。

居住用マンションの一室を自社事務所として使用することが取得時に明らかな場合
建物全体が居住用賃貸建物に該当する。合理的に区分していれば、居住用賃貸部分に係る課税仕入れ等の税額のみ、仕入税額控除の制限を受ける。合理的に区分とは使用面積割合など実際に応じた基準による区分。共用部分も合理的に区分可能。

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@smoritoshi

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