税務弘報 2016年7月号
特集 相続税務最新事情・傾向の落とし穴
銀行提案の自社株対策の落とし穴
公認会計士・税理士 金井義家先生
以前、保険サービスシステムの研修でお話いただいたことのある内容もチラホラ。
あくまでも融資、投資信託や仕組債などの金融商品への投資勧誘、保険のセールス、不動産売買仲介など、彼らのビジネスの実現を目的としている。 中でも、銀行から「事業承継コンサルティング」名のもとに提案される「自社株対策」は典型的である。
と、金井節で手厳しく断罪。
で、銀行提案の自社株対策は基本的には以下の2パターンしかないと。
- 資産管理会社方式
- 持株会社方式
なぜなら、上述したように銀行のビジネスに直結するのは数ある対策のうち上記2つだから。
ここで、資産管理会社方式を実行することで税負担が増加するリスクあり。
さらに、この提案書には顧問税理士に相談のうえ実行するよう注意書きがあるので(あるある)、失敗すると税理士への損害賠償へつながりかねない。
資産管理会社を利用した手法は以下のとおり。
- 後継者が資産管理会社設立
- 資産管理会社は銀行から融資を受けて現経営者(父)から自社株式を買い取る
- 現経営者は自社株に代わり現預金が手に入り納税資金ゲット。
- 後継者は資産管理会社を経由はしているが自社株をゲット。
- 銀行は融資をゲット。
三方良しに見えるが。
上記2での資産管理会社が現経営者から買い取る自社株の評価が相続時より高額評価されるので、何もしないで相続まで待っていた方が税負担が少なくなることも(もちろん何もしなければ現経営者の生前における議決権の移転は実現しませんが)
譲渡による自社株評価は法人税法基本通達9-1-13、9-1-14や所得税法基本通達59-6を根拠とするが、これすら知らない税理士も多く、実行時に特に顧問税理士から指摘されることもなくスルーされてしまう、と。
資産税の基本のキですが、法人・所得税法上の自社株評価は相続税法上の自社株評価額よりも高く出ます。
- 常に小会社評価
- 土地、上場株式の時価評価
- 法人税相当額の控除不可
が理由ですね。
例として、相続税法上の評価額10億円、法人税・所得税法上の評価額65億円というのが掲載されています(5倍を超える乖離は珍しくない)
- 相続税なら5.5億円の税負担
- 資産管理会社実行なら41.3億円の税負担
これはリスキー過ぎる。
銀行提案はよくよく吟味すべきということですね。
(P21左段下から8行目のカッコについてカッコ閉じがない誤植あり)
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi
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