週刊税務通信 平成28年3月28日 №3402より
札幌地方裁判所は,一部が事務所用のマンションの固定資産税評価額の算定上,住居部分と事務所部分に異なる経年減点補正率を使うことの是非などが争われた事件で,一棟の建物全体に対し単一の経年減点補正率を適用するものとして,原告の主張を認めた。 本件は札幌市が控訴している。確定内容によっては,ほかの自治体の課税実務にも波及することが考えられるため,その行方に注目されたい(平成25年(行ウ)3 札幌地方裁判所平成28年1月28日判決)。
前提として、33個の専有部分がある一棟の10階建てマンション。
1個の事務所と32個の住居部分、その他共用部分で構成。
札幌市の計算では。
- 住居部分⇒住居の補正率を適用
- 事務所部分⇒事務所の補正率を適用
- 住居と事務所を合計して一棟の建物の価格を算定
原告、裁判所の計算では。
- 住居部分&事務所部分⇒一棟全体に住居の補正率を適用して一棟の建物価格を算定
固定資産税実務提要の取扱い…札幌市の一棟の区分所有建物に異なる補正率を適用して部分ごとに評価する方法は,建物の主体構造部分の価格を適正に評価しているとはいえない。本件建物の価格は,建物全体に単一の補正率を適用して建物全体の評価をしたうえで,税額を算定してあん分すべき。
と裁判所は判断。
建物の主たる用途が住居だから、建物全体の再建築費評点数に住居の補正率を適用すべきと。で、住居の補正率の方が固定資産税評価額が低くなるので固定資産税も減額されるわけですね。
札幌市では『固定資産税実務提要』に則り運用していたものの卓袱台をひっくり返された格好。
複数の用途に供されている一棟の家屋は,原則として主たる用途に応じた経年減点補正率を適用すべき。家屋の評価や課税の均衡上問題がある場合には,例外的に,用途や構造の異なる部分ごとに異なる経年減点補正率を適用できる。
で、札幌市以外にも同様の取扱いをしている自治体はあるので、本件が確定した場合には影響が出てくるでしょうね。
ちなみに、政令指定都市で札幌市と同じ方法を採用しているところは以下のとおり。
- 横浜市
- 相模原市
- 浜松市
- 大阪市
- 北九州市
- 熊本市
当然政令指定都市以外にも札幌市と同じ取り扱いをしている市区町村はあるはずです。ただ、これ、税理士側からは提案等はできませんよね。知らんがな、って話であって。納税者側から指摘を受ければ当然確認をとることはできますが。
還付の場合、減額更正は5年で時効ですが、自治体によって取扱いはまちまち。特別な取り計らいがあることも多いので、該当するなら5年超でも確認することが必要。
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関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi
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