税理士職業賠償責任保険事故事例―2016年度版― その1

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今年もこの季節になりました。秋だなぁって思いますね。例年のとおり消費税の税賠が突出しております。いくつかメモ。

消費税簡易課税制度選択不適用届出書提出失念により過大納付となった事例

平成22年7月に税理士が簡易課税制度を選択。25年7月以降税理士は太陽光発電設備の投資計画の説明を依頼者から受けていたところ、依頼者が27年2月に太陽光設備を取得、売電開始。27年5月期決算作業中に簡易課税選択不適用届出書の提出失念発覚。

22年7月に簡易届出、24年5月期、25年5月期と簡易の適用を受けており、26年5月期中に簡易課税選択不適用届出書を提出しておく必要があったわけで。期末ギリギリに提出すればいいやというのが誤りのもとで(自戒)、提出可能となったら即作成、提出可能としておくべきなんですよね。簡易の適用不適用はわかっていたのにもかかわらず、「うっかり」忘れてしまうのが怖い。

課税事業者選択届出書提出失念により過大納付となった事例

26年4月、依頼者法人設立(決算期12月)、課税事業者選択届出書を年末に提出しようとしたところ、e-Taxが年末につき停止中で電子申告できなかったため、1月5日に電子送信。後日、税務署より無効の旨。連絡あり過誤発覚。

これは消費税法の不勉強によりよく聞く失敗事例。12月決算の法人税申告であれば12月31日が「休日等」に該当、翌1月1日も「休日等」に該当するため、提出期限は通常であれば1月2日となります(2日が土日だったりするとさらに3.4日になったりしますが)。ところが、消費税の届出についてはこの「休日等」が適用されず、12月31日が期限となります。これを知らないと上記事例のような税賠対象となってしまいます。これ、失敗したって話を結構聞きますので、12月決算法人はともかく、個人事業主は全員これに該当してきます。ホント注意が必要です。なぜ消費税の届出は「休日等」が関係ないのかは条文の規定上そのように読めてしまうからで。

例えば法人税の申告期限は以下の規定ぶり。

内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。

つまり、提出期限を定めている。

消費税の届出書は以下の規定ぶり。

第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、その基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。第十一条第四項及び第十二条第三項を除き、以下この章において同じ。)が千万円以下である課税期間につき、第一項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間を除く。)中に国内において行う課税資産の譲渡等については、同項本文の規定は、適用しない。

つまり、「提出をした日の属する課税期間の翌課税期間について適用云々」となっており、「休日等」はここでは考慮されないのですね。

正直、見落としがちなところですが、一度見聞きしてしまえば失念は防げる部分ではあると思います。

というか、そんな条文の作り方やめて統一して欲しい。地雷すぎる。

(続く)

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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