成年後見制度の普及を阻む壁 弁護士 遠藤英嗣

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成年後見制度の普及を阻む壁 |マネー研究所|NIKKEI STYLE

本人が申し立てるというケースについて考えてみます。

 Aさんは3年前にアルツハイマー型認知症が発症していることが判明したものの、知的障害を持つ子どものBさんがいたことから、自宅で共同生活をしていました。しかし症状が進行し、共に後見開始の申し立てが必要になりました。本来、市長が申し立てすべきなのですが、申し立ての費用は申立人負担であるため、市の支出を抑えたいという理由で、市長は申し立てしませんでした。

 そこで、市の福祉に携わるソーシャルワーカーの人たちが中心になり、Bさんについては親族申し立て、Aさんについては本人申し立ての書類を作成し、Aさんが署名して裁判所に提出しました。

 このとき、Aさんの認知症は夜間の徘徊(はいかい)がみられ、日常生活に支障をきたすような行動を取るなどの症状が出るまでに進行していました。誰の目から見ても、総合的判断能力の障害は重篤で、医師の診断書も「後見相当」となっていました。

 Aさんのように、認知症が進んだ人の申し立てを有効として後見開始の審判をしている裁判所もあると聞きますが、やはり、このようなケースでは市長の申し立てを選ぶべきだと思います。

 しかし、この首長申し立てに消極的な市町村は少なくありません。15年の統計を見ても、ある県(人口約103万人)では年間の件数がわずか12件です。この県の南北に位置する県(人口は、約113万人と約132万人)では共に80件を超える申し立てがあります。

認知症が進んだ状態で本人申立てですか。申立費用の負担者が申立人だからという理由で市町村長申立てせずに…

福祉行政にかかわる立場にある人の正しい選択を望みます。

遠藤先生もさすがに警鐘を鳴らさざるを得なかったという危機感が伝わってきます。

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