名義変更前提の「低解約返戻金型逓増定期保険」に税務リスク

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週刊税務通信 平成28年3月28日 №3402より

 外資系の生命保険会社が中心となって販売する『低解約返戻金型逓増定期保険』の税務上の取扱いが問題となっているようだ。この保険商品最大の特徴は、大幅に変動する「解約返戻金」の返戻率。契約から一定期間中は払込保険料の20%程度に抑えられている一方で、一定期間経過後は払込保険料の90%以上まで跳ね上がる。
 問題となるのは、「解約返戻金」が低額に設定されているケース。所得税法基本通達では、名義変更された場合の保険契約の権利の評価は「解約返戻金の額」とされている。しかし、この保険商品の性質を踏まえると、名義変更時の解約返戻金の額が、個人の受ける経済的利益の額として評価することが“不合理”とされる可能性がある。

所基通36-37<保険契約等に関する権利の評価>によると、法人契約の保険商品を個人に名義変更する場合、贈与or売却の2パターンが考えられますが、このときの評価額は「解約返戻金」の額。

低解約返戻金型逓増的保険では、例えば、毎年の保険料1,000万円として、

4年目 返戻金:800万円 返戻率:20%

5年目 返戻金:4,750万円 返戻率:95%

と設計しておき、

4年目に法人から個人に名義変更、売却で。評価額は解約返戻金800万円、役員が法人に800万円支払う。

5年目に、役員が保険料を支払ったうえで、解約、一時金として解約返戻金4,750万円を受領。一時所得課税なので、

4,750万円△(800万円+1,000万円)=2,950万円

(2,950万円△50万円)×1/2=1,450万円 ⇒ 課税対象

これはどう考えてもおかしい。一方で、これはおいしいと感じる人たちが購入しているのでしょう。

国税庁の記者クラブに等しい税務通信に「経済的利益の額としての評価が不合理なら給与課税の可能性も」と書かせるくらいですからね。今後の展開は推して知るべしかと。

売っていた保険会社はどのように契約者に説明するんでしょうか。売った後は税理士任せなんですかね。税務上の取扱いは顧問税理士にご確認くださいって。

以前にはこんな記事もありました。

大手生保の「租税回避商品」是か非か 中小企業オーナーにうま味も 法律的にグレーゾーン

 これまで外資系保険など6社が扱っていたが、国内3位の明治安田生命保険が今年3月、解約返戻率の上昇度合いが大きいこの保険商品を売り出したことで注目されるようになった。明治安田によると、同商品は発売後、8月までに1747件を契約しており、順調な売れ行きだという。
 明治安田生命は産経新聞の取材に「税務調査で(申告漏れの)指摘を受ける事例が他社の商品で発生しているため、当社職員には名義変更、解約を前提とした租税回避が目的の契約募集は絶対に行わないよう指導している」と説明した。

「絶対」ねぇ…

 大阪国税局関係者は「税法の条文がない以上、形式的には合法と言わざるを得ない」としたうえで、「個別の事案は、税務調査で実態に即して判断することになる」と含みを持たす。

私はオススメできませんが果たして皆様はどうでしょうか。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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コメント

  1. […] 名義変更前提の「低解約返戻金型逓増定期保険」に税務リスク […]

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