土地の固定資産税評価の問題点
税理士界 第1333号 発言席 名古屋会 樋沢武司先生
倍率方式で評価する際、そもそもの固定資産税評価額に無道路地等の補正がされていないケースも考えられるので注意されたし、と。
固定資産税評価額の算定方法としては2つ。
- 市街地宅地評価法(路線価式評価方法)
- 標準宅地比準方法
市街地宅地評価法は相続税の路線価方式とほぼ同じ仕組です。
総務省は市区町村に対し、土地の固定資産税評価額算定上、市街地宅地評価法の適用範囲の拡大を推奨しており(中略)固定資産税の路線価が敷設されている地域は、相続税の路線価地域よりもかなり広範囲となっていることに注意せねばならない。
確かに、実務において調べモノをしていると、市街化調整区域でも固定資産税の路線価が敷設されていることはよくありますね。
無道路地の問題点
固定資産税評価額自体に無道路地の補正が反映されていれば、単純に倍率を乗じて相続税評価額を算定できます。
しかし。
固定資産税評価額に無道路地の補正が反映されていない場合は、これを相続税評価の時点で考慮して評価しなおす必要があります。
固定資産税評価額の決定プロセスを確認しなければ、その妥当性は判定できず、税理士としても適正に対処しなければ無道路地補正を見逃す危険性がある。固定資産税評価額に無道路地としての補正がなされていない場合は、倍率方式であっても何らかの調整を図らなければ、相続税評価額が時価以上になってしまう。
無道路地以外にも、同様の危険性のある「市町村長の行う所要の補正」として、以下が列挙できます。
- 道路高低差
- 用悪水路介在
- 歩道橋接面
- 騒音・振動(高速道路、新幹線、在来線等)
- 忌み施設近接
- 悪臭施設近接
- 各種規制区域(急傾斜地)
- セットバック
- 日照阻害
- 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
- 農業用施設用地
- 都市計画施設予定地
倍率方式は簡単、と税理士は認識しがちです。単純に「固定資産税評価額×倍率」とするとミスるということです。与えられている固定資産税評価額がそもそも正しいとは言えないところに倍率方式による評価の困難さがあります(路線価方式も路線価自体不正確なこともあるのですが…)。
地方の地主さんの全ての土地について上記全てを確認できるかどうかは疑問ですけれど。
相続税の話以前に、固定資産税評価額に上記補正が加味されていなければ、ずっと固定資産税を過大納付していることになりますけどねぇ。
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嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
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