ここ最近、立て続けに洋の東西を問わず、国外居住親族の扶養控除についてのご相談を受けましてイロイロ調べておりました。日本国内に出稼ぎに来ている外国人の方が母国に住む親族を扶養控除の対象にできるかどうか、ってところです。
平成27年度税制改正に伴う所得税基本通達の主な改正事項について
平成27年度税制改正に含まれていたのですね。失念しておりました。実務で取り扱わないとスルーしてしまうところではありますが…不勉強でした。
国外居住親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化
1 税制改正の概要
⑴ 確定申告において、非居住者である親族(以下「国外居住親族」といいます。)に係る扶養 控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類 及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示しなければなら ないこととされました。ただし、下記⑵又は⑶により添付し、又は提示したこれらの書類に ついては、添付又は提示を要しないこととされています(所法 120③二等)。
⑵ 給与等又は公的年金等の源泉徴収において、国外居住親族に係る扶養控除、配偶者控除又 は障害者控除(以下「扶養控除等」といいます。)の適用を受ける居住者は、親族関係書類を 扶養控除等申告書等に添付し、又は扶養控除等申告書等の提出の際に提示しなければならな いこととされました(所法 185 等)。
⑶ 給与等の年末調整において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は、送 金関係書類を扶養控除等申告書に添付し、又は扶養控除等申告書の提出の際に提示しなけれ ばならないこととし、国外居住親族に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者は、親族関 係書類及び送金関係書類を配偶者特別控除申告書に添付し、又は配偶者特別控除申告書の提 出の際に提示しなければならないこととされました(所法 190 等)。
⑷ 上記の「親族関係書類」とは、次の①又は②のいずれかの書類(当該書類が外国語で作成 されている場合にはその翻訳文を含みます。)で、その国外居住親族がその居住者(納税者) の親族であることを証するものをいいます(所規 47 の2④)。
① 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその国外居住親族の 旅券の写し
② 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(その国外居住親族の氏名、生年月日 及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
⑸ 上記の「送金関係書類」とは、その年における次の①又は②の書類(当該書類が外国語で 作成されている場合にはその翻訳文を含みます。)で、その国外居住親族の生活費又は教育費 に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます(所 規 47 の2⑤)。
① 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引によりその居住者(納税 者)からその国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、そのクレジットカード発行 会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等及びその商 品等の購入等の代金に相当する額をその居住者(納税者)から受領したことを明らかにす る書類
⑹ これらの改正は、平成 28 年分以後の所得税について適用されます(改正法附則 10 等)。
(後略)
存在が不確かな親族を何十人も扶養控除の対象として不当に減税するケースが散見されたことからの改正のようですが。そりゃいちいち国外にその存在を現地確認いけるほど課税当局におかれましては人的にも物的にも余裕はないわけで。
非居住者である親族=国外居住親族を扶養控除等の対象として確定申告や年末調整したい場合、「親族関係書類」&「送金関係書類」を添付することが義務付けられました。
「親族関係書類」&「送金関係書類」はともに外国語で記載されている場合には、翻訳文も含めて添付。
「親族関係書類」とは
その国外居住親族がその納税者の親族であることを証明するもの。具体的には以下の書類。各国における戸籍的な証明書とパスポートのコピーのことですね。
- 戸籍の附票の写しその他の国等が発行した書類及び旅券の写し
- 外国政府等が発行した書類(その国外居住親族の氏名、生年月日、住所等の記載があるもの)
「送金関係書類」とは
その国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの。具体的には以下の書類。金融機関の書類で納税者がその国外居住親族に支払いをしたことを明らかにする書類。つまり送金がわかる通帳のコピーですね。
- クレジットカード発行会社の書類でその国外居住親族が商品等を購入したこと及びその商品代金を納税者から受領したことがわかる書類
- この添付の義務は平成28年分以後の所得税から適用。
ここまではわかったのですが。問題は次でした。新設された通達です。
送金関係書類の範囲
【新設】
(送金関係書類の範囲)
120-8 規則第 47 条の2第5項各号に掲げる書類(以下 120-9までにおいて「送金関係 書類」という。)は、同項の居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充 てるための支払を、必要の都度、各人別に行ったことを明らかにするものをいうのである から、居住者が一の国外居住親族に対して他の国外居住親族の生活費又は教育費に充てる ための支払を行った場合における当該支払に係る送金関係書類については、他の国外居住 親族に係る送金関係書類には該当しないことに留意する。【解説】
(前略)したがって、居住者が一の国 外居住親族に対して他の国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を含めて一括 で行った場合の取扱いについて、疑問も生じ得るところです。 本通達は、居住者が、一の国外居住親族に対して他の国外居住親族の生活費又は教育費に 充てるための支払を行った場合における当該支払に係る送金関係書類は、他の国外居住親族 の送金関係書類に該当しないことを明らかにしたものです。 したがって、例えば、国外居住親族(A)が国外居住親族(B)の分も含めて一括で生活 費又は教育費に充てるための支払を受けた場合には、当該支払に係る書類は、国外居住親族 (A)の送金関係書類に該当しますが、国外居住親族(B)の送金関係書類には該当しない こととなります。
え?
母国に住む妻に子供の分も含めて生活費を送金した場合は、子供の送金関係書類には該当しないと???その場合、子供の送金関係書類は存在しなくなります。そんな現実離れした通達がありますかね。
そもそも金融機関を通さないで送金している場合はどうなるのでしょうか。実際には金融機関を通さず、宅急便を送るときにいっしょに箱につめて送ってしまうってことはよくある話です。
んー悩みますね。
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi