消費税 軽減税率の導入準備 とはいうものの…

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税務弘報 2017年2月号

年の初めに読んでチャージ!2017年税務のポイント総予習

消費税 軽減税率の導入準備 税理士金井恵美子先生


これはかなり手厳しい指摘の原稿。行間から軽減税率導入に対する怒りが滲む。

軽減税率適用ミスが税務調査で指摘された場合、対消費者取引では修正したからといって追加の支払を求めることは不可能。数年分の累計額の増差は事業者負担となり資金繰り悪化。

軽減税率を適用すべきところ標準税率を適用した場合、過大納付となり税務調査で問題となるわけではないが、公正な取引の見地から法的問題となる可能性があり、「税率を偽って不正な取引を行った企業」としてHPが炎上するかも(さすがに穿ちすぎではないかなとも思いますが…)

ドイツではマクドナルドは客が支払税込み価格を店内飲食もテイクアウトも同額に設定していて、テイクアウトにしても安くはならない。軽減税率はマクドナルドの納税額を減らすだけ。

軽減税率の導入は「納税事務」という無償の役務の提供を増幅させる。

軽減税率の目的は逆進性の緩和と痛税感の緩和とされている。

逆進性の緩和

そもそもなぜ改めて所得を基準に逆進性を問わなければならないのか。

消費税の枠内で逆進性を緩和するために軽減税率を導入してもその効果は極小。

財務省の試算によると、年収200万円未満世帯と年収1,500万円以上世帯で逆進性は0.4ポイントしか改善されない。

さらに減らした税収のほとんどが低所得者以外の利益となる。軽減税率の負担軽減額は1,500万円以上世帯で17,762円、200万円未満世帯で8,372円。税制により税負担が減少するということは政府から補助金を受け取ることに等しい効果。つまり、軽減税率制度導入で貧しい世帯の2倍以上の補助金を高所得者世帯に与える結果となる。

痛税感の緩和

上述したように逆進性の緩和の効果はほとんどない。であれば、軽減税率導入の目的は痛税感の緩和にほかならない。

が、痛税感の緩和とは感情の問題。税収の減少と執行のコストはさらに標準税率の引き上げの要因となり、コンプライアンスコストは商品価格に転嫁され消費者の負担増となる。

複数税率が軽減税率と言い換えられたことについても、

この言い換えが、制度に対する人々の期待感を煽り、その効果や影響についての冷静は議論の妨げになった側面があると考える。

とピシャリ。

消費税という税目内で逆進性の緩和をはかろうとする試みが徒労に終わるのはEU諸国において証明済。

そもそも世界の研究者はEUの付加価値税は軽減税率によって疲弊していると指摘、税率の収斂と制度のシンプル化を目指すべきで、そのモデルは日本の消費税としているのだから、軽減税率導入に向かっている現状はもはやミステリー

新聞は「知識への課税」を振り回すことについて、「厚顔」とこれも手厳しい。

そもそも、「知識」は公共財であるが、新聞記事には著作権があり、新聞は競合的で排除可能な私的財である。新聞を公共財と位置づける認識には、戸惑いを禁じ得ない。

金井先生、お怒りです。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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