社会保険適用拡大のポイントと対応策 誤解しやすい「106万円の壁」


税務弘報 2017年2月号

社会保険適用拡大のポイントと対応策 

税理士・社会保険労務士 石丸喜博先生

2016年10月から以下の4要件全て満たす場合はパートであっても社会保険加入義務あり。

  1. 労働時間週20時間以上
  2. 標準報酬月額8.8万円以上
  3. 勤務期間が1年以上継続見込
  4. 社会保険の適用対象が501人以上の企業に勤務

4については12ヵ月間のうち6ヵ月以上において501人以上になると見込まれる状況であれば該当。


で、誤解しやすいものとして「106万円の壁」がある。これ私も勘違いというか完全に間違えておりました。

標準報酬月額8.8万円以上を12倍したところで約106万円となることから「106万円の壁」と呼ばれているらしい。

知らなかった!!!

標準報酬月額は「4~6月の賃金(残業代や通勤交通費を含む)を平均したものを、標準報酬月額等級表に当てはめる」ことで決定されるもの。

つまり、4~6月の給与平均が8.8万円未満であれば、他の月の収入が多くて106万円を超えても社会保険の徴収対象とはならない。

もちろん随時改定により4~6月以外に標準報酬月額の改定があれば話は別だが。随時改定は「固定的賃金の大幅な変動が3ヶ月間継続した場合」だけ適用される。

基本給に変更はなく、残業やシフト増加により8.9月の給与が多くても随時改定にはならない。


従前の「130万円の壁」がなくなったわけではない。

妻の年収が130万円超の場合、夫の健康保険の扶養から外れ、年金においても「第3号被保険者=保険料納付の必要がない」に該当しなくなる。

これが「130万円の壁」

今回の適用拡大に際し、勘違いの例として。

  • 130万円の壁ではなく、106万円の壁になった。
  • 年収106万円超で、扶養から外れて第3号被保険者でもなくなる。

これは間違いで、年収106万円超であっても社会保険適用対象にならないケースは多い。この場合は引き続き130万円の壁が適用。

例えば。

4~6月の給与は8.5万円/月、他の月で残業等があり、結果年収は120万円だったような場合。

標準月額報酬は8.8万円未満なので社会保険の適用なし、年収130万円に達していないので夫の扶養から外れず第3号被保険者のまま。

このあたり税理士は盛大に勘違いしている方が多いのでは。私だけか…


  • 社会保険適用の可否判断は交通費除外
  • 社会保険適用の場合で標準報酬月額を計算するときは交通費含める

例えば。

  • 4~6月の給与 8万円/月
  • 交通費1万円/月

→ 平均給与8万円なので社会保険適用対象外

  • 4~6月の給与 9万円/月
  • 交通費1.2万円/月

→平均給与9万円なので社会保険適用対象で標準報酬月額は10.2万円で等級表より9.8万円となる。

このあたりもあいまいになっているケースが…

自戒したい。


総じて、今回の改正の影響は軽微では?と。

501人以上の大規模企業、標準報酬月額8.8万円というのは結構ハードルが高い。


社会保険適用になりたくない場合、給与の抑制が必須。4~6月の給与を抑制することが重要になってくるが4~6月の残業を減らしても無意味。固定給で標準報酬月額は算定されるから。

対応策として。

  • パートでも「通常の勤務」と「時間外」を区別して勤務体系を作成。
  • 昇給ではなく賞与で支給

社会保険加入のメリットも考えよう。

  1. 傷病手当
  2. 障害・死亡の場合、年金給付あり
  3. 将来老齢基礎年金増加

3については、例えば、8.8万円/月なら1年勤務するごとに約5,800円、65歳以降の年収が増える。


社会保険逃れスキームとして「個人事業の併設」

法人であれば社会保険加入は必須だが、個人事業の場合は従業員5人未満は加入しなくてもいい。これを悪用するのだという。

不当な社会保険料回避として罰せられるおそれあり。税務上も不当な利益分割、不当な消費税逃れとして問題となる可能性も。

社会保険適用の不当回避により、支給事由が発生したときに年金が受給できないと、企業に賠償責任が発生するおそれもある。


勉強になりました。社会保険関係について税理士(特に私)は疎いですね。

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関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi


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