続き
相続開始前3年以内贈与加算の誤適用により相続税過大納付が発生した事例
平成17年10月20日発生相続の相続税申告について、相続開始前3年以内贈与加算が不要な相続人についても贈与加算をして平成18年8月12日提出。税理士がミスに気付いたのは平成27年9月2日で更正の請求期限を徒過していたため損害賠償請求。
税理士に対する損害賠償請求の時効は10年ですから、あと1年、平成28年8月だったわけですが、税理士が自ら誤りに気付いて報告したのでしょうか。だとしたらそれはそれで税理士として真摯な対応だと思いますが。それでも損害賠償ですか。
それにしても、税務署も、これくらいの単純な申告のミスはわかるだろうに、過大申告の場合は音沙汰なしですか。教えてくれない。厳しいものですね。
以下、保険金が支払われなかった事例。
税理士は依頼者から非上場株式の贈与について、500円/株で取得予定だが税金が発生するか相談を受け、本件贈与については配当還元方式が採用され、500円>配当還元価額となることから贈与税は発生しない旨回答。依頼者は贈与実行、その後、税務調査で配当還元方式が採用できないことが発覚、原則的評価方式による評価額と取得価格との差額は低額譲渡に該当すると指摘を受ける。依頼者は贈与税が発生するなら他のスキームを実行していたと主張、税理士の誤った回答により贈与税の過大納付が発生したので、損害賠償請求。
税賠保険において税務相談とは「既に発生している課税要件事実に対する『事後』の税務に関する相談」であるとし、「未だ発生していない事実に対する『事前』の税務に関する相談」は税賠保険の対象外としている。
本件については事前相談に該当、つまり、保険対象となる税務相談には該当せずに保険金支払いの対象外とされた。
これ、事前税務相談業務担保特約に加入していれば保険金の支払い対象となったかもしれませんね、という戒めのような事例。
甲社と乙社の経営分離、資本関係の清算合意の締結の際、税理士法人が両者の株価評価算定業務の依頼を受けたものの、算定の際、甲社の株式評価について純資産価額算定に当たり賃借物件の担保金額を誤ったため株価が本来より高額となる。その後、その誤った株価で甲乙間で資本及び経営分離の合意書締結。締結後、誤りに気付いた甲社より本来の株価との差額について損害賠償請求。
本件はいわばコンサルティング業務であって、税理士法第2条第1項に規定する税務代理、税務書類の作成及び税務相談のいずれにも該当しないため免責。
発生した損害が「過大納付税額以外」となるため、事前税務相談業務担保特約でも対象外。
これは怖い。コンサル業務として受ける場合は要注意。
完。
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嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
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