論陣 課税処分を最高裁まで争うことに関する一考察~争訟に係る期間の可視化~(関東信越税理士界)

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関東信越税理士界 第815号 2023年4月15日

論陣 課税処分を最高裁まで争うことに関する一考察~争訟に係る期間の可視化~

東松山支部 柳谷憲司先生

当支部の柳谷先生による論陣が非常に興味深い内容であり、他にない考察だったのでメモ。

争訟にかかる期間について、課税処分後に直接審査請求をする場合、裁決まで約1年3か月(審査請求可能期間3か月+標準審理期間1年)であり、ある程度の期間の見込みは付けられる一方で、税務訴訟における各審級の終局までの期間はどこにも集計がなく見積もることができない。

そこで柳谷先生が自ら国税庁に開示請求をした資料から分析し、可視化を試みた、と。大変な労力の仕事であり、頭が下がるしかないです。

そもそも課税処分の取消訴訟は、法務省がある東京都千代田区霞が関1-1-1を管轄する地裁(東京地裁)、処分をした税務署長の所在地を管轄する地裁、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高裁の所在地を管轄する地裁に適することができる、と。

納税者が第一審で提訴した裁判所を集計してみたところ。

事件数511件、東京地裁291件(57%)、大阪地裁72件(14%)、その他148件(29%)で、東京地裁と大阪地裁が突出しているが、これは両地裁に行政事件を専門に扱う部署があることなどがその理由としてあげられている。

確かに、税務訴訟で有名になって「国敗れて3部あり」と揶揄された藤山判決は民事3部でしたか。

関東信越国税局管内について、第一審は東京地裁か処分した所轄税務署を管轄する地裁に提訴するようで、55件中、東京地裁34件(61.8%)となっている。

で、課税処分に不服があって最高裁まで争う場合(最高裁で判決がある場合)、審査請求できる期間3か月、審査請求から判決が出るまでの期間約1年(標準審理期間)、訴訟を提起できる期間6か月、第一審の終局までの期間が平均で713日、控訴審の終局までの期間が平均で250日、上告審の終局までの期間が平均で660日、上訴期間が28日(2週間×2)とすると、最終的な結論まで平均で約6年4か月かかる、と。そのうえ、取消率は約10%です。

これはなかなかに厳しいです。費用もさることながらこの6年4か月の間の心理的なストレスは計り知れません。

しかし、としてここから柳谷先生は持論を展開します。

はじめから修正申告ありきで税務調査対応をした場合、法令解釈が条文からはわからず、立法趣旨、判例裁判例裁決、通達によっても解釈が明らかになっていない論点に関する事案については、納税者にとっては事後的に振り返ると不利に終結する場合や、そのような事案の集積により納税者に不利な実務が定着する結果、長期的にみると納税義務の適正な実現を図ることができなくなる場合も予想される。税理士法第1条を果たすためにも法令解釈や取扱いが明らかになっていない論点に関する事案について国税当局との見解の相違がある場合は、争訟において解決することも必要ではないか、と。

まさしくそのとおりであります。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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