教育資金贈与の落とし穴
東海会の芹澤光春先生による今号の発言席。思わずヒザを打ちたくなるところです。ご友人が金融機関の窓口で出納をしているらしく、聞いた話によると、教育資金以外の支払が多く、将来の贈与税負担が危惧される、と。現実にはそうなりますか…という印象を受けますね。入口で良いことばかり言っておいて契約を確保しても出口での対応次第では問題が起こりそうです。今後。
教育資金以外の支出の可否
教育資金贈与の特例を受けるためには、金融機関と信託契約を締結し、信託の主たる目的は教育資金の管理とされる。しかし、その支払いは教育資金に限定されているわけではなく、教育資金以外への支払いも可能。これは金融機関側に責任を負わせることまでは酷であるという判断の元、支払いについての記録、領収書等の保存、調書の提出を義務付けることまでとしている。
学校等以外の者に支払われる金銭
本特例でいう教育資金とは、
- 学校等に支払われる入学金その他の金銭(非課税限度額1,500万円)
- 学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの(非課税限度額500万円)
と規定され、2に該当するものは、学習塾、スイミングスクール、ピアノ教室、習字などの費用であり、平成27年度税制改正により追加された通学定期券代、留学渡航費もここに含まれる。2について問題なのが500万円を超えて支払うことが可能である点で、教育資金口座のマックスである1,500万円から2の限度額500万円を控除した残額の1,000万円が非課税特例の対象とならないケースがある。
教育資金の贈与と申告
教育資金管理契約は、以下の3つの事由が生じた場合に終了する。
- 受贈者が30歳に達したこと
- 受贈者が死亡したこと
- 口座の残高が0円となり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意があったこと
1 or 3の場合、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、その残額について、その事由が生じた日の属する年の贈与税の課税価格に算入される。この場合、贈与税の申告は金融機関が行うわけではなく、当然に受贈者がその年中の他の贈与と合わせてする必要がある。その贈与者からの贈与について相続時精算課税制度を選択している場合には、精算課税制度が適用されるが、その贈与者が契約終了時志望しているときは、暦年課税しか適用できないので注意(教育資金管理契約が終了した場合の贈与税の課税関係 措置法70条の2の2の9)
問題となる事例
- 教育資金以外の支払いがあった場合
- 学校等以外の者に対する支払いのうち500万円を越えた部分がある場合
贈与税の課税価格に算入する金額のマックスは1の場合1,500万円、2の場合1,000万円となり、贈与税はそれぞれ366万円と177万円となる。口座が0円になったために契約が終了した場合には納税資金の対応が必要になる。
税理士の説明責任
教育資金贈与制度は基本的には金融機関任せの特例であり、税理士が関与する場面は多くないが、教育資金以外の支払は贈与税の対象となることは知っていても、教育資金以外の支払いはできないと誤認しているケースが少なくないと思われる。税理士が関与するものではないと一蹴して金融機関に一任しては税理士としての説明責任の問題になろう。
とまとめてみましたが、やはり出口ですね。金融機関任せでは怖いことになりそうです。自戒したいところ。
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
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嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
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