相続税の報酬請求をめぐる最近の訴訟トラブル

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T&Amaster №683 2017.3.20 より

相続人との間で明確な合意なし、相続税申告業務に係る相当な報酬は幾らか

以前ご案内済の事例ですねこれ。

税理士報酬 従前の税理士会の規定等で算定

生前贈与について相続時精算課税制度を利用して贈与税の申告業務を税理士に依頼、その際、5万円の税理士報酬を支払い済。

相続開始後、相続人から税務代理権限証書を授権したうえで税理士は相続税の申告書を作成提出して、相続税申告報酬として200万円を請求。

相続人が支払いを拒否。

という流れ。

争点は2つで、相続人と税理士の間で委任契約が締結されていたのかがひとつ、もうひとつは200万円の報酬が合意されていたか。

裁判所は、相続税の申告の委任契約は成立していたと認定する一方で、報酬額200万円の合意は認められないと判断。

じゃ、いくらが合理的な報酬なのかといえば、旧報酬規程により156万7,500円だと。

遺産分割協議成立後の更正の請求手続き、相当な報酬金は幾らか

相続税申告報酬を210万円として委任契約締結。

分割協議が進展しないことから、税理士は未分割で申告、控えを相続人に渡して報酬210万円受領。

2年4ヶ月後、分割協議成立して税理士は更正の請求、2,700万円の還付。

税理士は更正の請求報酬として540万円請求。

相続人は報酬として105万円支払い。

税理士は差額を請求、相続人は105万円ではなく84万円は支払過ぎだったとして返金を請求、という事例。

裁判所はどちらの主張も棄却。


報酬の話は税理士側からは出しにくいものかもしれませんが、事前にきちんと確認しておくことが重要であることを再認識する必要がありますね。

「どこどこの税理士に相談したら『それは高いですね、うちならもっと安くできますよ』って言われましたよ!」なんて話をされてしまいがちで話ずらいかもしれませんが。

そこは、自分のところはこの報酬ですから安いところがいいならどうぞそちらで、とつっぱねる意志の強さが必要です。じゃ、下げます、は一番やってはいけないことですね。業界の縮小を生みます。

2例目の更正の請求の事例なんかは、なかなか請求しずらい部分がありますので、当初の契約締結時に、未分割時は別途報酬請求する旨を記載して、分割協議成立して更正の請求書を作成する前に再度確認することが必要でしょう。実際、当事務所の相続税の業務委託契約書はそのように記載してあります。あとから追加して説明するのは気が引けるものですから、当初から契約書に盛り込んでおくのがストレスフリーですね。特に相続税の場合はご商売をされている方ではないので費用負担の概念が希薄なことが多いので。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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