T&Amaster №803 2019.09.16
税理士のための相続税法講座 第50回 相続法改正(5)-遺留分 弁護士 間瀬まゆ子先生
遺留分の改正ポイントは以下の3つ。
- 遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化
- 受遺者の請求により裁判所が金銭債務の支払いにつき相当の期限を許与する制度の新設
- 遺留分算定の基礎財産に加える相続人に対する生前贈与を10年以内にされたものに限定
今回は1について。
旧法では、遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に発生すると解されていた。で、共有状態は当事者間の話し合いや調停で解決できない場合は、訴訟で決着を図ることになっていたため、納税資金が不足するなど問題があった。
とはいえ、旧法においても受遺者・受贈者側に価額弁償の抗弁が認められていた(遺留分権利者側からは主張不可)ので、実際には、共有状態で争うのではなく、金銭による解決が図られるケースが多かった。
そうはいっても、一時的にでも共有状態にはるのは事業承継等にも影響があることから今回の改正に。
ややこしくて勘違いしやすいところですが。
金銭債権化されたのは、遺留分に関する権利自体ではなく、遺留分に関する権利を行使することで得られる権利。
遺留分に関する権利自体は、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に名前を変更したものの、形成権かつ行使上の一身専属権として残っている。
なるほど。
旧法では。
①遺留分減殺請求権 → 行使 → ②所有権等の権利(共有状態が発生)
新法では。
①遺留分減殺請求権 → 行使 → ②金銭債権(全て金銭で解決)
となり、①は名称を変えつつ残存。②が変更されたと。
ただし。
双方が合意すれば代物弁済として給付は可能。譲渡所得は考慮する必要が出てくるが
遺留分侵害額請求権は旧法と同様、短期消滅時効は維持されているため、相続等を知った時から1年以内に行使しないと時効消滅する。
遺留分侵害額請求権の行使により生じる権利は、10年間の消滅時効に服する。
つまり。
遺留分権利者は1年以内に遺留分侵害額請求権を行使して金銭債権を取得し、その後、10年以内にその金銭債権を行使する必要がある、ということになる。
そして、遺留分侵害額請求権の行使により生じる債務は期限の定めのない債務となる。
ということは、遺留分権利者が受遺者に対して具体的な金額を示して履行を請求した時から履行遅滞に陥ることになる。
これは、受遺者側からすると金銭債権化することで遅延損害金が発生する時点が早まるという大問題がある。
旧法では価額弁償の抗弁を出さない限り遅延損害金は発生しなかったところ、新法では金銭債権の行使と同時に遅延損害金が年5%で発生してしまう。
期限の供与の制度を活用することで対応する方法があるけれど、これは弁護士さんにタイミングを図ってもらうしかなさそうです。
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi