週刊税のしるべ 平成31年2月25日
平成30年4月4日付非公開裁決
私も何年かに一度は遭遇する事案ではあります。
第五章 非居住者又は法人の所得に係る源泉徴収(源泉徴収義務)第二百十二条非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得(第百八十条第一項(恒久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例)又は第百八十条の二第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定に該当するもの及び政令で定めるものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
本件の経過によると、
- 平成27年7月14日 請求人は譲渡人との間で土地建物の売買契約書締結
- 平成27年10月30日 請求人は代金に係る領収書受領
- 請求人は売買代金支払の際、源泉所得税を徴収せず、法定納期限までに納付もなし
原処分庁の納税告知処分を不服として請求人が審査請求。
請求人の主張は、
- 譲渡人への本人確認は宅建業者が国内に住所がある旨を確認している
- 売買契約書や手付の領収書に記載された譲渡人の住所も国内
- 不動産取引で非居住者の事実を示す書類が義務付けられていない以上、非居住者の判定は困難
これに対する審判所の判断
- 覚書及び登記簿には譲渡人の住所としてオーストラリアの住所が記載されている
- 請求人は譲渡人の住所がオーストラリアにあるかどうかの問い合わせを行う等、非居住者か否かを確認する方法があったにもかかわらず確認していない
ということで、確認を怠った請求人に責任があるとして原処分庁の処分を適法と判断。
本件は譲渡人がオーストラリアの住所を意図的に隠そうとしたのかどうかはわかりませんが、結局、源泉されないで譲渡代金を受け取って国外に行ってしまえば、基本的に日本の税務署はその譲渡代金について税金を徴収することは困難です。ということで、源泉徴収義務が設けられているわけですから、非居住者についての国内源泉所得の源泉徴収義務を失念した場合は本件と同じ結果になると思われます。
意図的に隠そうとする非居住者もかなりいるはずで、これを見破るのはものすごく難しいですし、とはいえ、今後はこのような事案が増加するはずです。お隣中国の方との取引も増えるでしょうし。
私が関わった案件の場合は、明らかに非居住者が譲渡人だったので源泉徴収して事なきを得ていますが。
細かいところでは、手付等についても源泉徴収する義務があるのは頭の片隅に入れておいて欲しいところです。
ただ、これを取引の当事者である法人や個人の源泉徴収義務者がわかっているかといえば、ほぼ知らないので、大きな金額が動くときには、顧問税理士に確認する習慣がないと地雷を踏んでしまう確率は跳ね上がるはず。
確かに請求人の主張するように、非居住者の譲渡人については、非居住者である旨を示す書類等がないと確認は難しいのですが、その書類を添付書類にしてしまうと、それこそ意図的にその書類を隠して源泉されないで国外に逃げられた場合は、譲受人に対しても源泉所得税を請求できなくなり、永遠に課税機会を失ってしまうので、そんな改正はありえないでしょう。
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嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
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