『Q&A遺贈寄附の法務・税務と財産別相続対策』 税理士法人タクトコンサルティング 金森民事信託法律事務所

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遺贈寄附という法律上の用語があるわけではなく、タクトさんにおける最近の頻出テーマであるように見受けられる「遺言により遺族以外の非営利目的の事業を行う第三者に財産を寄附すること」を指すようです。

相続人がいないようなおひとり様が財団を作ってそこに遺贈して公益事業に供するようなケースが考えられますが、そこでの法務、税務上の注意点がありますので、そのあたりが的確にまとめられている印象。税金対策というよりは、相続対策の意味あいが強い感じではありますけれど、そうはいっても税務上の注意点はありますので、いくつか気になったところのメモ。

個人が公益法人等に対して不動産を寄附すると、寄附者が時価で譲渡したものとみなされて、譲渡所得が発生します。この寄附が遺贈で行われた場合、遺贈者の相続人は準確定申告の義務を負うことになります。自分は不動産を相続していないのに、その譲渡所得について準確定申告で納税だけ発生しうるわけで、このあたりを事前に説明しておかないと相続人からクレームが発生してしまいますので要注意。

ここで。
法人に対する遺贈が特定遺贈である場合、法人は準確定申告に関して申告義務も納税義務も追いません。上記の取扱いとなります。

一方。
法人に対する遺贈が包括遺贈である場合、包括受遺者である法人は被相続人の債務を承継するので、包括受遺者である法人も被相続人の準確定申告の共同提出義務を負い、所得税の納税義務を承継します。

さらに。
上記みなし譲渡については、以下の3要件を満たすことについて国税庁長官の承認があれば、措置法40条の規定により非課税となります。

  1. 公益増進要件
  2. 事業供用要件
  3. 不当減少要件

公益増進要件
その寄附が、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること

事業供用要件
寄附財産を寄附があった日から2年を経過する日までの期間内に受贈法人の公益目的事業の用に直接供する、または供する見込みであること

不当減少要件
その寄附が寄附者またはその親族等の相続税、贈与税の負担を不当に減少する結果とならないと認められること

不動産の遺贈寄附においては、措置法40条の非課税の規定の適否の鍵は、2の事業供用要件に留意が必要。不動産の寄付の場合、「受贈法人の公益目的事業の用に直接供するまたは供する見込みがある」という要件を満たすことが非常に難しいため。例えば、不動産を保育園事業を行う公益法人等に寄附する場合、建物の改修等で保育園事業における園舎として利用する場合が該当しますが、実際に園舎として利用できるかどうか、状況的に難しいケースがあるようで。

また、不動産を遺贈寄附する場合の留意点として。
敷金等を負担付遺贈する場合、敷金等の負担部分である債務は、対価となり、みなし譲渡の無償譲渡に該当しないこととなり、そもそも措置法40条の非課税の規定は適用できないこととなる。

寄附財産が居住用財産の場合は、居住用財産の3000万円の特別控除(措置法35条)の適用を検討する必要がある。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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