税務会計情報ねっ島TabisLand 2015/11/12より
かつては任意で行われていた事前通知だが、国税通則法改正によって平成25年1月以後の調査から義務化され、これによりある日突然税務調査に入られて大慌てするといったことは少なくなった。
しかし、事前通知はあくまで原則であり、「例外」もあるので十分な注意が必要だ。 国税通則法74条の10では、事前通知することで「違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ」、または「その他、調査の適正な遂行に支障をおよぼすおそれ」があると判断された場合には無予告での調査を認めている。
通則法改正により条文化されたことで、逆に無予告調査の例外に対する口実としている感じも受けますね。無予告調査を受ける現場の実感としては。とはいえ、「現金商売だから」というのは無予告の理由にはなりません。無予告調査に臨場する調査官の常套句ではありますが。
無予告調査について事前通知を要しないとする国税通則法74条の10には以下のように規定されています。
(事前通知を要しない場合)
第74条の10
前条第1項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第3項第1号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第1項の規定による通知を要しない。
下線部のようなおそれがある場合には事前通知は要しないとしています。
では、下線部のようなケースとはどのようなものかというと、通達に記載があります。
(「その営む事業内容に関する情報」の範囲等)
4-7 法第74条の10に規定する「その営む事業内容に関する情報」には、事業の規模又は取引内容若しくは決済手段などの具体的な営業形態も含まれるが、単に不特定多数の取引先との間において現金決済による取引をしているということのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえないことに留意する。(「違法又は不当な行為」の範囲)
4-8 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為」には、事前通知をすることにより、事前通知前に行った違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、事前通知後は、このような行為を行わず、又は、適法な状態を作出することにより、結果として、事前通知後に、違法又は不当な行為を行ったと評価される状態を生じさせる行為が含まれることに留意する。(「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合の例示)
4-9 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。
- (1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第127条第2号又は同条第3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
- (2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。
- (3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。
- (4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。
- (5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。
(「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合の例示)
4-10 法第74条の10に規定する「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(3)までに掲げるような場合をいう。
- (1) 事前通知をすることにより、税務代理人以外の第三者が調査立会いを求め、それにより調査の適正な遂行に支障を及ぼすことが合理的に推認される場合。
- (2) 事前通知を行うため相応の努力をして電話等による連絡を行おうとしたものの、応答を拒否され、又は応答がなかった場合。
- (3) 事業実態が不明であるため、実地に臨場した上で確認しないと事前通知先が判明しない等、事前通知を行うことが困難な場合。
4-7の下線部において、現金商売というだけで無予告調査とする理由にはならないとあります。その他、上記例示を見ても、真っ当に商売している顧問先にあてはまることは少ないと思います。
とはいえ、無予告調査はあり得ますから、来た場合には顧問先がどのように対応するのかは事前に打合せはしておくべきです。当事務所の場合、現金商売の顧問先については顧問契約を締結するときに、対応についてご指導しております。
まずは、会社内(店舗内)に調査官を入れさせないことです。そのうえで、「税理士に連絡するので外でお待ちください」と伝えましょう。
このとき、調査官がイロイロ言ってきても動じないことです。場合によっては「税理士に連絡すると後々不利になりますよ」なんて言ってくるかもしれませんが気にしないようにしましょう(最近はさすがにそこまでは言ってこないかもしれませんが…)
その後、私が調査官と電話で対応します。「今日の今日で立会は既に予定があり無理なので、別の日程で調整させてください」なんて伝えます。ここでは調査拒否まではしません。当事務所の顧問先で後ろめたいことをしているところはありませんので、正々堂々と調査を受けます。ただ、事前通知なしでは法令も礼儀も仁義もあったもんじゃありませんから、別日で調整です。そもそも無予告が必要とされるような会社等は当事務所では顧問いたしませんので。
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi