T&Amaster №867 2021.01.25
これはなかなかメンタルが強めの税理士です。
原告法人の自社株評価額が約17億円弱に高騰したことから、被告顧問税理士が退職慰労金支給で会社資産を減らすことで株価を下げたタイミングで生前贈与して、資産税コンサルティング業務を締結という流れ。
原告は退職慰労金支給は一般的な方法で高度なコンサルティング業務ではないのに税理士が高額報酬を請求したと主張したものの、裁判所は株価は1/7以下に下落し、報酬は1816万円と高額ではあるが、税効果の4%相当で社会的相当性を逸脱するほどではないと指摘。株価引下げ業務の目的や経緯は合理的と判断。
ここだけは税理士の主張が認められたが、他については軒並み税理士に対する損害賠償責任を裁判所は認めている。
(当初契約)
顧問報酬月額52万5千円、決算報酬157万5千円、資産税コンサルティング業務報酬月額52万5千円
(株価引下げ業務)
株価引下げのうえ、後継者に贈与を提案する資産税コンサルティング業務報酬1816万5千円
(欠損金の繰戻還付)
還付請求書作成報酬265万円、還付成功報酬(還付金の10%)1,200万円
(株式交換による組織再編業務)
1374万円
(納税猶予支援業務)
835万円
(一般社団法人活用支援業務)
3064万円
個人的にはいくら高くても契約で成立しているのですから問題ないと思いますが、納税猶予の取消事由を見落としていたり、株式交換による組織再編が後継者の死亡後の相続税対策だったり、組織再編と一般社団法人活用支援業務は一体のコンサルティング業務であるにもかかわらず個別に報酬を請求したりと、結構、めちゃくちゃです。これでは損害賠償責任は免れないでしょう。
欠損金の繰戻還付の還付請求書で265万円もさることながら、成功報酬で還付金の10%相当として1,200万円の報酬もなかなかの強気設定です。
このあたりは事前に契約を締結していなかったのでしょうか。事前に報酬内容が開示されていればさすがに契約には至らないと思いますし。
地方税の繰戻還付請求についてはもはや茶番です。そもそも地方税には繰戻還付制度は存在しません。にもかかわらず、還付額の10%相当を成功報酬として請求して受領しているのですが、存在しない還付金をどうやって成功報酬として請求するのか。からくりは、納付の必要のない法人地方税を一旦納付してそれを還付するという手法。さすがにこれはまずいでしょう。これで504万円の報酬はやりすぎです。税理士としての矜持もなにもないです。
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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
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嵐山町固定資産評価審査委員会 委員
@smoritoshi