鈴木大介『老人喰い』―高齢者を狙う詐欺の正体

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積読を読了。暗澹たる気持ちにさせられる一方で、読んでいる最中に不謹慎ながらわくわくしている自分に気付いた。

 

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非常に高度に組織化、分断化、効率化、合理化された詐欺組織に穴はないように思える。もうこれは株式会社である。しかもハイリターンなブラック企業としての。詐欺の手口を啓蒙して防犯対策を施したとしても詐欺師たちの進化の方が圧倒的に早く意味がない。

  • 貯蓄ゼロの人間を騙して無価値なものを200万円全額ローンさせる
  • 貯金2000万円の人間を騙して200万円を奪う

どっちが悪い?

「老人は日本のガンだ。」と嘯きつつ、洗脳して組織を強化していく過程を読むにつけ、老人喰いは永遠になくならないと諦めるしかない。

騙される方が愚か、という認識がいかに愚かなものか。詐欺だとわかっていてもカネを渡してしまう心理がわからないと対策のしようもない。というかわかっても対策の仕様がない。なぜなら付加情報を強化された名簿とそこから勝手に被害者側が忖度する詐欺師の暴力が背景にあるからで。

結局S稼業以上に努力が報われる仕事がないってことです。そもそも「労働単価」が違いますから。まず一般職で勤め人はしばらくの間はできないですよ。くだらなくて。それ以上に、これは俺自身そうですが、Sの店舗の人間とほかの会社の人間と比べると、殴りたくなってきちゃうんですよ、モチベーション低すぎて。

わかる気もする話である。

ラストあとがきにドンつまり感がひたすら漂う。もうダメかもわからんね。

 本来富める高齢者がやってくるべきだったのは、自らの子供や孫に教育費や労力を費やすことのみならず、将来的に自らの世代を支えてくれる「若い世代全体」に金と手間をかけて育て、支えてくれるだけの環境と活力と希望を与えることだった。だが現実は、まったく逆だ。いまもって、若い世代を支える社会制度、学費問題、子供を抱える親への支援、あらゆる「未来の生産力を育てる」ための問題提起や政策よりも、常に最優先され多くの金が動くのは高齢者問題。呆れるほどに固定化された老尊若卑…
 今後の老人喰を収束に導く方法は、防犯対策でも彼らの手口を啓蒙することでもない。ただ、これからの世代に「与え、育てること」しかないように思われてならないのだ。

著者鈴木大介氏のインタビューも秀逸。一読の価値あり。

格差社会の復讐者たち

 

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関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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