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税理士界第1328号 特集座談会


消費税軽減税率制度の問題点と低所得社対策の代案

なかなか読み応えのある座談会で、消費税の軽減税率導入の問題点が整理できました。そうそうたる出席者である。

財源喪失、政策効果

  • 経団連では中小企業や流通団体との連盟で昨年7月に単一税率の維持を求める意見書を出しており、そこでも軽減税率を導入すると社会保障制度がもたないということを主張。今までの与党税制協議会の議論ではこの財源喪失に伴う代替財源の議論はなされていない。自然増収ではうまるわけがない。
  • 軽減税率は消費税率10%への引き上げに伴う低所得者対策として一定の財源を使うものだが、非常に効率が悪い。高所得者のほうにより多くの利益が及ぶことになるから。
  • 日税連も①軽減税率により税収が減少すると財政再建が損なわれることとなり、税収を補填するために標準税率を更に引き上げるか社会保障給付を抑制等することが必要になる、②軽減税率による税収減収額のうち、低所得者世帯に効果が及ぶ軽減税額は限定的。
  • 軽減税率の目的は低所得者対策なので、高所得者に恩恵を及ぼす必要はない。
  • 「軽減税率に賛成か反対か」という形でアンケートを実施すれば賛成が多くなるのは当たり前。「軽減税率を導入することと、導入によって失われる税収を補填するために標準税率をあげることと、どちらがよいか」という聞き方をすれば全く違う結果がでるのでは。
  • そもそも軽減税率という言葉自体、問題あり。いわゆる税制改革法の7条では複数税率という言葉を使っていた。あるときから軽減税率という耳障りのよい言葉になってしまった。

対象品目の線引き

  • 複雑な分類に普通の事業者は耐えられないだろう。
  • 生鮮食品かどうかの判断が難しい。すしネタを盛り合わせたセット商品の取り扱い。しめさば、カツオ、蒸しエビ、卵焼きなどが一緒に入っていて生鮮食品と加工食品が混在している。このような商品にはどのように値付けして表示するのか。税務調査の実地調査率が下がっている中、軽減税率の対象かどうかの判断にエネルギーと時間をかけている場合ではない。
  • イギリスで有名な訴訟でP&Gが販売しているスナック菓子の「プリングルス」がポテトチップスかケーキかってものがある。P&G社は税率20%が適用されるポテトチップスではなくゼロ税率が適用されるケーキとして販売。根拠は「原料に占めるじゃがいもの含有率が50%未満なのでケーキ」と。判決では「原料が42%ということより、お客がどう認識しているかということが重要だ」と判示され国が勝訴。このような裁判を事業者も国も莫大なコストをかけてやっているヨーロッパの現状がある。OECD租税政策・税務行政センター局長パスカル・サンタマンは軽減税率について「Don’t follow Europe」といっている。ドイツではカフェの前に設置されているテラス席で食べると軽減税率、店内で食べると標準税率ということがある。
  • 日本商工会議所などと、絶対に軽減税率にしなければならないところまで追い込まれたら、食品以外のたとえば電気ガス水道にすることを提案しようと相談している。

権益の温床化

  • 選挙があると、政党はある商品・サービスを軽減税率の対象にすることを公約に掲げる。そうやって徐々に軽減税率の対象が広がっていく。物品税時代の有名な話。当時、童謡は物品税が不課税。「黒猫のタンゴ」が発表されミリオンセラーになったときこれが童謡か歌謡曲かということで、国税局の間接税部門が国税局長室で音楽を聴いて大議論したという話が残っている。

事務負担(区分経理)

  • 日本は四半世紀にわたってインボイス無しでやってきて、それが中小企業を含めて当然の世界。そこに新たにインボイスや税額別記請求書のようなものが導入されればその事務負担だけで大反対が起きる。
  • 転嫁の問題について、実務では税抜価格で値決めしても更に値引きを迫られるケースがあるのも事実で、現時点ではインボイスの導入には賛成できません。日本の帳簿組織は世界に冠たるものだと思いますので、現行の請求書等保存方式を維持すべきだと思います(上西)

免税点制度と簡易課税制度

  • 日税連の考え方は、基準期間制度を廃止して、すべての事業者を課税事業者にすべき。益税の問題は解消される。そのうえで、当該課税期間の課税売上高が現行制度でいえば1,000万円以下の小規模事業者については申告をしてもよいし、しなくてもよいという選択制を考えている。
  • 軽減税率が導入された場合の簡易課税制度は、相当に複雑になってみなし仕入率は成立できないのでは。バーやスナックと食堂やレストランは軽減税率適用のある酒類の仕入が異なり、同じ飲食業でも一律のみなし仕入率を適用するわけにはいかない。ドイツは約40種類に細分化されている。簡易課税制度ではなく複雑課税制度というべきものになる。

低所得者対策の代案~給付付き税額控除

  • 本来イ(給付付き税額控除)かロ(複数税率)かを議論しなければならないのに、現在はロの導入が是か非かという議論しかしていない。
  • 給付付き税額控除という名前を消費税還付制度わかりやすくする。
  • 資料3(民主党の古川元久議員が予算委員会でつかったもの)によると、給付付き税額控除(消費税還付対策)では明らかに逆進性が取り除かれているが、軽減税率は生鮮食品を7%と仮定した場合、逆進性緩和にはほとんど効果はない。
  • 給付の基準については、金融資産性所得や資産の額は議論になる。所得はゼロだけど資産を10億円所有している人が果たして低所得者といえるかどうか。

軽減税率の導入阻止に向けて

  • 公明党は3度の選挙で公約に掲げているので、公党の約束として簡単には引き下がれないだろう。
  • マスコミの取り上げ方にも原因があるが、軽減税率で税収が減れば減るほど標準税率が上がる可能性が高くなることが理解されていない。

 

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