簡易課税制度をめぐる諸問題

tax memo

月刊税理 2015年10月号 対談 簡易課税制度をめぐる諸問題より

熊王先生、渡辺先生という新旧大原消費税法講師による簡易課税制度が抱える問題についての対談ですね。

 

改正により、代理店手数料は第四種事業だったところ、第五種事業になります。税理士業務は元々第五種事業ですから、税理士事務所が生命保険の代理店をしている場合はすっきりしますね。もちろんみなし仕入率が60%から50%になるので納税額はアップしますが。

事業区分の判定上、重要な論点として、上から順番に見ていく、と。第一種に該当するか。該当しない場合は第二種に該当するか。第一種、第二種、第三種、第五種、第六種ときてどれにも該当しないのが第四種に行き着く。

ここでずっと疑問だったことが解消されました。なぜ第一種、第二種、第三種と来て第五種に飛んでしまうのか。

そもそも簡易課税の事業区分は、消費税導入当初は第一種と第二種しかなかったのです。どちらか多い方でやってしまっていいという粗雑な時代があったので、平成3年度の改正で第三種と第四種が新設されました。そのときの第四種が、第一種、第二種、第三種以外のものという定義になっていました。

その後、平成6年度の改正で第五種が新設されて、今さら順番を変えられないから、第一種、第二種、第三種、第五種という順番で見てきて、どれにも該当しないものが第四種になるということです。

なるほど。そういう経緯があったのですね。税法は改正の歴史を把握していないと陥穽にはまることがありますからねぇ。

簡易課税制度廃止論

平成21年度の国税庁資料によると、課税事業者のうちに簡易課税制度適用者の割合は以下のとおり。

  • 金融・保険業 49%
  • 不動産業 61.6%
  • 農林水産業 72.2%

地方の場合、確定申告期に農林水産業者が大挙して会計事務所に訪れてくる、というのは岩下忠吾先生も研修でよく語られている話ですね。

法人274万社中、本則課税適用事業者49%、簡易課税適用事業者20%、小規模事業者31%

個人事業主557万中、本則課税9%、簡易課税15%、小規模事業者76%

(今はどうかわからないが)平成5年の山本守之先生の書籍によると、カナダでは税理士や会計士の簡易課税は認めていないということです。確かに実額計算が困難な事業者に配慮して設けられたのが簡易課税制度ですから。税理士、会計士が実額計算できないというのは通りませんよね。とはいえ、税理士事務所もほとんどが簡易課税制度適用者でしょうから、これをカナダのように改正するのはハードルが高いでしょう(既得権益)

ということで簡易課税の制度設計をどうするかという話はありますが、廃止は無理筋だと。

簡易課税制度の事業区分

第一種、第二種は性質及び形状の変更を伴わないことが条件。性質及び形状の変更が伴った場合は製造業ということで第三種。「軽微な加工」が難解で質疑応答事例で迷宮に迷い込むレベル。

日本標準産業分類との関係

第三種、第五種、第六種は【概ね】日本標準産業分類の大分類を基礎として判断。

この【概ね】がくせ者で、日本標準産業分類を簡易課税の事業区分の基準にしつつ、簡易課税の事業区分にそぐわないものについては、通達等で矯正している。

例えば製造小売業。感覚的に製造小売業は製造業だが、日本標準産業分類を見ると、製造小売業は大分類「E」の製造業ではなく、大分類「I」の「卸売業、小売業」に含まれている。とはいえ製造物なので卸売業、小売業ではない。さらに日本標準産業分類の製造業にも含まれないので第一種、第二種、第三種に該当しない。当然第五種、第六種にも該当しないので第四種に流れる。これは妥当でないので通達13-2-6で製造業に含めると矯正をかけている。

事業区分の判定を間違えると倍々で税金が増えますし、100%税理士の責任となります。恐ろしいことです!

電化製品の販売店がエアコンを販売したとして、取付工事も行った場合、エアコンの販売は第一種、第二種は異論ないところ。別途取付手数料を収受した場合、質疑応答によると第五種。一方、日本標準産業分類では「I 卸売業・小売業」に含まれる。他にも委託販売手数料(第四種)、修理手数料(第五種)などなど、違和感のある事業区分が多々あります。

歯科技工士の事業区分をめぐる判決

これは有名な判決ですね。名古屋地裁平成17.6.29では納税者勝訴、名古屋高裁平成18.2.9で納税者逆転敗訴です。

歯科技工所は医療業で第五種と課税庁が主張し、地裁では納税者勝訴で第三種とされたものの、高裁は納税者敗訴で第五種と判断されたものです。日本標準産業分類を基準とすれば明らかに第五種なんですけども。高裁判決で納得がいかないのは、TKC(記事では某社となっていますが)の経営指標を参考にして、歯科技工所は課税仕入の構成比が50%近いので第五種のみなし仕入率に合理性があるとしている点ですよね。この理屈ですと実額の仕入率とみなし仕入率がずれていたらすべて違法となってしまいますし。

あるべき簡易課税制度の姿

(前略)結局どうやったって益税は出るのです。

だったら、適用ラインを3,000万円くらいに下げて、簡易課税というその名のとおり、もっと簡易にしてしまうのです。(中略)3種類くらいで、第一種、第二種、第三種で、そこで益税が出ようが、全体のパイが小さいのだからいいじゃないかと割り切るのです。

そうなりますよね…

「座談会 軽減税率~導入の是非と今後の展望」も興味深く読みました。軽減税率ぶった切りですね。上西先生におかれましては軽減税率反対を貫徹して欲しいところです。

 

ということで、購入しました。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi


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