遺産分割協議の助言ミス 税賠保険免責

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週刊税務通信 平成29年1月23日 №3442より

税理士が遺産分割協議の相談も依頼されて申告業務の一環として分割協議案を3通り作成。依頼者が配偶者の税額軽減が最大となる案を選択して税理士が遺産分割協議書を作成。

税務調査後、財産評価の見直しにより修正申告が必要になり、その修正申告においては配偶者の税額軽減が最大とならず、当初申告から適正に財産評価していれば分割協議の内容も異なっていたとして、増差について税理士が依頼者から損害賠償請求を受けた事例。

遺産分割や遺贈に関する助言指導に起因する賠償責任は税理士職業危険特別約款第6条第1項10号により免責と規定されており、税賠保険の対象外。

第6条(保険金を支払わない場合-その2)
   当会社は、直接であると間接であるとを問わず、普通約款第4条(保 険金を支払わない場合)①から⑧までに規定する損害のほか、被保険 者が次の賠償責任を負担することによって被る損害に対しては、保険 金を支払いません。
 ① 被保険者の犯罪行為(刑を科せられるべき違法な行為をいい、時 効の完成等によって刑を科せられなかった行為を含みます。ただし、 過失犯を除きます。)もしくは不誠実行為またはその行為が法令に反 することもしくは他人に損害を与えるべきことを被保険者が認識し ながら(認識していたと判断できる合理的な理由がある場合を含み ます。)行った行為に起因する賠償責任
 ② 被保険者が、不正に国税もしくは地方税の賦課もしくは徴収を免 れ、または不正に国税もしくは地方税の還付を受けることにつき、 指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為を行ったこと に起因する賠償責任 
③ 被保険者が、故意に真正の事実に反して税務代理または税務書類 の作成をしたことに起因する賠償責任 
④ 被保険者が、日本税理士会連合会に備える税理士名簿に登録を受 けず(税理士業務の停止および禁止処分を受けた場合ならびに税理 士名簿の登録を取り消され、まっ消され、およびまっ消されるべき 場合を含みます。)に行った行為に起因する賠償責任
 ⑤ 他人の身体の障害(障害に起因する死亡を含みます。)または財物 の損壊、紛失もしくは盗難に起因する賠償責任
 ⑥ 重加算税または重加算金を課されたことに起因する賠償責任
 ⑦ 税理士業務報酬(日当、旅費および宿泊料を含みます。)の返還に かかる賠償責任 
⑧ 業務の結果を保証することにより加重された賠償責任
 ⑨ 情報の漏えいに起因する賠償責任
 ⑩ 遺産分割または遺贈に関する助言・指導に起因する賠償責任

良かれと指導助言したものの税賠になるなんて悲惨です。争族でもないのにいちいち弁護士なんかかませていられないのも実務。これを事故とあきらめるか。いや、リスク回避のためには専門家紹介は避けられないか。業務委嘱契約書にどのように記載するかもポイントですね。

この他、不動産の賃貸借契約書の作成、遺言書作成、社会保険労働保険の手続なんかも税理士の日常業務に潜むリスク要因。顧問契約されていて信頼関係が構築されている場合はまだ何とかなったりするものですが、遺産分割協議や遺言書作成など単発でスポット的に依頼される業務についてはリスク高いですね。

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関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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