相続税の税務調査対策等について(新井宏先生)

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相続税の税務調査対策等について、浦和支部の新井宏先生に再登場いただき、お勉強をしてきましたので、いくつかメモ。

平成28事務年度における相続税の調査の状況について|国税庁

抜粋して加工したものが以下。

区分 全国 関東信越 東京
①申告件数(平成27年分) 103,043件 13,906件 32,209件
②実地調査件数 12,116件 1,912件 3,227件
  ③調査割合 11.8% 13.7% 10.0%
④非違件数 9,930件 1,544件 2,468件
  ⑤非違割合 82.0% 80.8% 76.5%
⑥重加算税賦課件数 1,300件 347件 233件
  ⑦重加算税賦課割合 13.1% 22.5% 9.4%

注目したいのは赤字の部分。

まず調査割合について、関東信越国税局13.7%に対し、全国11.8%、東京10.0%。かなり関信局は実地調査の割合が高いということです。

さらに、非違割合も東京局より高い。

で、一番の注目は重加算税賦課件数。関信局347件に対し東京局233件。重加算税賦課割合でみると、関信局22.5%に対し東京局9.4%、全国平均13.1%。

これは異常でしょう。納税者の資質というよりも税務当局にその要因があると考える方が普通。埼玉と東京で納税意識が違うってことは考えられないので。

思うに、次の二つの理由かと。

  • 東京局の審理課が重加算賦課要件を満たす基準が厳しい。資料収集とか。逆に関信局の審理課がゆるい。
  • 関信局管内の税理士が重加算賦課について税務調査時に対応できていない。

個人的には両方だと思いますね。


相続税法58条により、税務署は市町村から被相続人の死亡通知を受け取るが、その通知にはその市町村所在の不動産の明細は添付されている。なるほど。

相続税の「お知らせ」文書の送付を最近は行っていない税務署もあるとか。これも個人的には発送しなくていいかと思いますけどね。無駄なコスト。


被相続人の銀行調査について、まずは相続開始日から3年の応当日で残高証明書を取得して、残高に大きな変動があれば、取引履歴を確認する流れ。

重点管理富裕層については、基本的に永久管理しているが、たまに実際のおカネの流れや様子を確認する意味で、別件で調査に来ることがある。例えば不動産所得の調査を装って、実際は、資金の流れ等を付随的に見ているなど。あくまでも表面上は不動産所得の調査。


名義預金について、妻からの反論として「毎月渡された生活費をやりくりし、残ったお金は夫からお前の好きにしていいと言われていた」と主張された場合、「お前の好きにしていい」が贈与と受贈の意思表示に当たるかどうかが問題となる。贈与と主張したいなら契約書は?ということで納税者が贈与の是非を証明しなければならなくなってしまう。後付けで贈与にするのはまぁ無理。


預金口座から直前の現金引出について、使った証拠もないが、手元にあるかどうかもわからない。現金の存在を税務署は証明していないのに相続税課税するのは納得いかない。という納税者の主張には、間接証拠を積み上げた結果、現金が被相続人の支配が及ぶ範囲から流出したという事実は認定できない、つまり、相続開始時には現金があった、と裁決。

間接証拠で税務署が固めたら、今度は納税者の方で流出して手元にはない、ということを立証挙証する必要がある。できなければ常識的に手元にあるでしょ、ってこと。


重加算税の賦課について、仮装隠蔽しただけでは要件を満たさず。意図を外部からもうかがい得る特段の行動が必要。

外部からもうかがい得る特段の行動とは例えば。

  • 顧問税理士の質問に嘘の回答をする
  • 通常であれば保管される原始資料の破棄
  • 税務調査に対する非協力、虚偽答弁、虚偽資料の提出

財産があることを知っていて、申告しないのはそれだけでは重加算税にならない。単なる過少申告加算税。

次のようなケースに注意。

妻名義の預金があり、これを申告財産に入れていなかったことについて。

  • 税務署「これは誰のもの?」
  • 妻「私のもの」
  • 税務署「誰が稼いだの?」
  • 妻「夫が稼いだ」
  • 税務署「そしたらご主人のものじゃないの?」
  • 妻「確かにそう言われれば…」
  • 税務署「質問応答記録書を作成しますね」
  • 質問応答記録書の記載内容「夫が稼いだお金から作った夫の預金。私名義のため申告しませんでした」
  • 重加算税賦課理由「相続財産であることを知りながら、申告しなかった」

この流れはおかしい。当初は妻は本当に自分名義の預金は自分の財産だと思っていて、税務署からの指摘で夫のもだということに認識を改めたわけで、途中の経過をすっ飛ばして結論だけ質問応答記録書に記載して当局に都合のいいように書き換えられている。嘘の自白調書を取られているのと同じことになってしまっている。

質問応答記録書には要注意。国税通則法改正前の申述書みたいなもんですね。

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関東信越税理士会東松山支部 経理部長
関東信越税理士会埼玉県支部連合会 会員相談室相談員
嵐山町固定資産評価審査委員会 委員

@smoritoshi

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